「営業やバックオフィスのAI活用はよく聞くが、自分たち情シス(情報システム部門)は何から手をつければいいのか」——少人数で全社のITを支える情シスほど、この問いに答えを持てずにいる部門はないかもしれません。結論から言うと、情シスのAI活用は、ヘルプデスクの一次対応や社内FAQのような「件数が多く定型的な業務」から着手し、効果を確かめながらシャドーAI対策のようなガバナンス領域へ広げるのが定石です。
この記事では、なぜ情シスのAI活用は後回しにされがちなのか、情シス部門で効く7つのユースケース、始めるときに外せない勘所、そして具体例までを、FDE サービスを提供する株式会社 DeploAI が解説します(社内問い合わせAIの仕組みは社内FAQ・問い合わせAI、シャドーAI対策の具体策は生成AI利用ガイドライン、他部門はバックオフィスのAI活用・営業のAI活用も参照)。
なぜ情シスのAI活用は後回しにされがちなのか?
情シスは2〜5名程度の少人数体制で全社のITを支えることが多く、日々のヘルプデスク対応や運用保守に追われ、AI活用そのものに時間を割きにくい構造にあります。
営業やマーケティングのAI活用は「成約数」「記事本数」のように成果が見えやすい一方、情シスの仕事は「問い合わせに答える」「システムを止めない」「規程を整える」といった、目立たないが止められない業務の積み重ねです。この構造には、次のような特徴があります。
- 業務が広く、担当が薄い:ヘルプデスク・アカウント管理・ネットワーク・セキュリティ・購買と守備範囲が広いのに、専任を割ける人数は限られる
- 「守り」の意識が強い:情報システムを扱う立場上、新しいツールの導入自体に慎重にならざるを得ない
- 可視化されていない利用が広がりやすい:現場が勝手に契約したSaaSや、個人アカウントでの生成AI利用(シャドーAI)を、情シス自身が把握しきれていないことがある
だからこそ、他部門以上に「業務単位のユースケースに分解して、効果が見えやすいところから着手する」進め方が有効です。
情シス部門でAIが効くのはどこ?——7つのユースケース
情シスの業務は「ヘルプデスク・ナレッジ」「運用保守」「資産管理・ガバナンス」の3系統に分解でき、それぞれにAIが効く定番のユースケースがあります。
| # | 領域 | ユースケース | AIがやること(人が最終確認) |
|---|---|---|---|
| 1 | ヘルプデスク | 社内ヘルプデスクの一次対応自動化 | パスワードリセット・アカウントロック・接続不良など定型的な問い合わせに自動応答し、解決しなければ人へ引き継ぐ |
| 2 | ナレッジ | 社内FAQ・ナレッジ検索 | 社内規程・マニュアルを参照して、根拠つきの回答を下書きする |
| 3 | ナレッジ | マニュアル・手順書の自動生成 | 作業ログや過去のやり取りから、手順書・案内文のたたき台を生成・更新する |
| 4 | 運用保守 | インシデントの一次切り分け | 障害報告やアラートの内容を分類し、影響範囲・緊急度の一次判定を支援する |
| 5 | 運用保守 | 定型運用作業の下支え | 監視アラートの要約、定型的な変更作業のチェックリスト化・実施記録の作成 |
| 6 | 資産管理 | SaaS・アカウントの棚卸し | 利用中のSaaSと付与済み権限を可視化し、不要なアカウントやシャドーITの候補を洗い出す |
| 7 | ガバナンス | シャドーAI対策・利用ガイドライン運用 | 生成AIの利用ルールの整備・周知と、安全に使える公式ツールへの導線づくりを支える |
いずれも共通するのは、AIが「一次対応・下書き・可視化」までを担い、権限変更やアカウント削除のような重大な操作の最終判断は人が行うという役割分担です。情シスは全社のアクセス権限を握る立場にあるぶん、この線引きがとくに重要になります。
深掘り①:ヘルプデスクの一次対応自動化
ヘルプデスクの問い合わせは、パスワードリセットやアカウントロック解除、VPN接続トラブルなど、毎回ほぼ同じ手順で解決できる定型的な内容が多くを占めるとされます。
こうした定型対応を、社内ナレッジを参照して回答する仕組み(社内FAQ・社内RAG)に任せると、担当者は「毎回同じ説明を繰り返す」作業から解放され、個別対応が必要な障害調査やシステム更新に時間を回せます。仕組みの中身(知識基盤・検索と根拠づけ・運用設計の3要素)は社内FAQ・問い合わせAIで詳しく解説しています。ここで肝心なのは、AIが答えられない・答えるべきでない質問は、すぐに人へエスカレーションする設計にすることです。曖昧な障害報告に無理に回答させると、かえって対応が遅れます。
深掘り②:シャドーAI対策とSaaS・アカウント棚卸しはワンセットで考える
シャドーIT(未承認のSaaS利用)とシャドーAI(未承認の生成AI利用)は、「情シスが把握していないところで使われている」という同じ構造の問題であり、可視化から手をつける点も共通します。
シャドーAIは、生成AIの利用を全面禁止にすると、かえって社員が個人アカウントでこっそり使ってしまうことで広がりやすいとされています(禁止一辺倒がシャドーAIを生む構造は生成AI利用ガイドラインで詳しく解説しています)。これに対して情シスができる備えは大きく2つです。ひとつはSaaS・アカウントの棚卸しで、社内でどんなSaaS・AIツールが実際に使われているかをまず可視化すること。もうひとつは、禁止だけで終わらせない利用ガイドラインの整備です。「何が使えないか」だけでなく「何なら安全に使えるか」を示すことで、現場は公式の道を選びやすくなります。棚卸しで実態を把握し、ガイドラインで安全な使い方を示す——この2つは、順番も含めてセットで進める領域です。
情シスがAI導入で外せない3つの勘所とは?
情シスは全社のアカウント権限とシステムを扱う立場にあるぶん、他部門以上に「AIに何を見せ、何を操作させるか」の設計を丁寧に行う必要があります。
情シスがAI導入で外せない3つの勘所。全社の権限を扱う部門だからこそ、線引きと可視化を先に固める。
- ① 権限とアクセスを設計する:AIにどのシステム・データを参照させ、誰の権限で動かすかを先に決める。ヘルプデスクAIが社内ナレッジ以外の機密情報にまで手を伸ばさないようにする
- ② 重大な操作は人が最終承認する(Human-in-the-Loop):アカウントの発行・削除、権限変更のような取り消しにくい操作は、AIに下書き・提案までを任せ、実行は必ず人が判断する
- ③ 可視化から小さく始めて型化する:SaaS棚卸しや問い合わせ分析のような「まず実態を見える化する」領域から始め、効いた手順を型として他業務に広げる
この3点を押さえれば、情シスのAI活用は「便利そうなツールを入れたが誰も運用しない」で終わらず、日々の業務に根づきます。
具体例:情シス2名体制のヘルプデスク負荷を試算すると?
少人数の情シスほど、ヘルプデスクの定型対応にかかっている時間を数字で見積もると、AI活用の優先度が判断しやすくなります(以下はすべて説明用の仮の数値です。実際の件数・削減効果は自社の問い合わせ内容と自動化の設計次第で変わります)。
情シス担当者が2名という体制を想定します。たとえば月間の社内問い合わせが200件あり、そのうち「パスワードリセット」「アカウントロック解除」「VPN接続トラブル」といった定型的な内容が半数の100件程度を占めるとします。1件あたりの対応時間を仮に10分とすると、定型対応だけで月およそ17時間、2名で分担していても1人あたり月8〜9時間ほどがこの対応に充てられている計算になります。
ここをヘルプデスクの一次対応(社内FAQ・社内RAGによる自動応答)が肩代わりできれば、浮いた時間を、後回しにされがちなSaaS・アカウントの棚卸しや、インシデント対応の仕組み化といった業務に回せます。もちろんこの数字はあくまで説明用の仮定であり、実際の効果は自社の問い合わせ内容の分布と、どこまでを自動応答に任せるかの設計次第です。まずは自社の問い合わせログを眺め、「定型的な内容がどれくらいの割合を占めているか」を確認するところが出発点になります。
情シスのAI活用は、DeploAIのFDEでどう進める?
FDE(Forward Deployed Engineer/フォワードデプロイドエンジニア)は、事業と業務を理解したエンジニアが現場に入り込み、御社の実際の業務フロー・システム・権限に合わせてAIを組み込み、社内に残す形で支援するサービスです。
情シスのAI化がうまくいかない典型は、「便利そうなAIツールを試したが、自部門の権限やシステムにどう組み込むか判断できず放置される」というものです。FDE は、この溝を埋める役割を担います(FDE の全体像はFDEとはを参照)。
- ヘルプデスクの一次対応や社内ナレッジ検索を、御社の規程・システムに合わせて実装する
- SaaS・アカウントの棚卸しから、シャドーAI対策のガイドライン策定までを一連の取り組みとして支援する
- 権限設計・人の最終承認を組み込んだ安全な運用を仕組みとして残し、御社が自走できる状態(内製化)への移管を前提に進める
情シスは業務範囲が広いぶん、どこから手をつけるかの見極めそのものに時間がかかりがちです。FDE は、現状診断からユースケースの実装、定着、内製化移管までを一気通貫で伴走します(進め方はサービス内容、費用は料金)。
まとめ
- 情シスのAI活用は、ヘルプデスクの一次対応や社内FAQのような「件数が多く定型的な業務」から着手し、効果を確かめながら運用保守・ガバナンス領域に広げるのが定石
- 効く7つのユースケースは、ヘルプデスク一次対応・社内FAQ・マニュアル自動生成・インシデント一次切り分け・定型運用作業の下支え・SaaS/アカウント棚卸し・シャドーAI対策
- シャドーIT(未承認SaaS)とシャドーAI(未承認の生成AI利用)は同じ構造の問題であり、棚卸しによる可視化とガイドライン整備はセットで進める
- 情シスは全社の権限を扱う立場にあるぶん、権限とアクセスの線引き・重大操作の人による最終承認・可視化からの小さな着手の3点を特に外さない
- DeploAI の FDE が、現状診断から実装・定着・内製化まで、情シス部門の実際の業務に合わせて伴走する
情シスのAI活用をさらに深掘りしたい方は、社内FAQ・問い合わせAIで社内RAGの作り方を、生成AI利用ガイドラインでシャドーAI対策の具体策を確認してみてください。他部門の状況もあわせて見たい方はバックオフィスのAI活用・営業のAI活用へ。導入のご相談はお問い合わせから承っています。
関連記事:社内FAQ・問い合わせAI|生成AI利用ガイドライン|バックオフィスのAI活用|営業のAI活用は何から始める?|FDEとは